【前編】子育てや部下の指導にも使える最強のコーチングスキルとは

learn coaching skills 思考法

最近は、大学生や社会人の若い人から、色々と相談を受ける機会が増えてきました。ふと、なぜ自分に相談しに来てくれるのかと考えた結果、私の「コーチング」スキルにその答えがあるのではと思いました。

私はコーチングの知識やスキルを本で独学した程度です。それでもコミュニケーションが必要な様々な場面で、十分に活用することができていると感じています。今後は、グローバル化やデジタル化が益々進展し、多様な価値観やバックグラウンドを持つ人々と接する機会が増えると予想されます。

そんな時代においては、コーチングの知識やスキルを身につけておくことはプラスになると考えています。そこで、参考として、私が実践しているコーチングの基本的な考え方を紹介したいと思います。

そもそも、「コーチング」って何?という方もいるでしょう。また、子育てや部下の指導などにもコーチングを活用したいと考えている方もいると思います。

多少長くなるので、前編・後編に分けて記事を書きます。前編でコーチングとは何かを説明してから、後編で具体的なコーチングのやり方について説明しようと思います。

1. コーチングとは

コーチングは、ティーチングと対比して考えると理解しやすいです。ティーチングとは「教える」ことです。つまり、先生が生徒に一方的に、情報(知識やスキル)を伝えるというコミュニケーションを指します。学校の先生や、塾の講師、企業の研修講師などを想像すれば分かりやすいでしょう。私たちの日常にはティーチングが溢れています。

一方で、コーチングはどうでしょうか。多くの人はあまり馴染みがないと思います。当然、ティーチングの「教える」とは異なるコミュニケーションです。コーチングでは、相手に自発的に気づいてもらうようにガイドしていきます。

「ん?相手に一体何を気づいてもらうの?」

コーチングでは、相手に「目標達成」や「問題解決」の具体的なプロセスについて気づいてもらいます。簡単に言うと、相手が次にどのような行動を取ればよいのか考えてもらうのです。ティーチングとは違い、こちら(コーチ)から答えを直接教えたりはしません。

勿論、ただ気づいてもらうだけでは不十分です。実際に、目標達成や問題解決に向けて行動を起こしてもらいます。コーチングを行う場合は、「行動」が伴わないと意味がありません。そして、その行動が継続するように定期的にサポートも行います。

最終的には、相手が自分自身で自発的に行動していける状態までガイドします。これらの一連のプロセスと、その中での対話的なコミュニケーションをひっくるめて、コーチングと呼びます。

「???何を言っているのか全然分からないのですが…」

私もコーチングを勉強し始めた当初は、さっぱり分かりませんでした。その原因としては、抽象的な理論が多く登場し、全体像や具体的なやり方が見えてこないことにありました。

コーチングで相手が辿る全体的な道は、下記の通りです。
気づき → 行動 → 継続 → 達成・解決

簡単に言うと、自分がやるべきことに気づいてもらい、具体的な行動を起こしてもらいます。そして、行動を続けてもらい、その人の課題を達成したり、解決したりしてもらいます。

実際には、上記の道を辿っていく際に、「対話」というコミュニケーションでガイドしていきます。対話の要素は大きく下記の3つです。

  • 傾聴
  • 承認
  • 質問

これら3つの要素のサイクルを回していきます。この辺りの具体的な方法については、後編の記事でまとめます。

2. コーチングの誤解

「コーチングって、何だかカウンセリングと似ている気がする…」

一番多い誤解は、相手の話を聞いてあげて、頑張りや努力を認めてあげるのがコーチングだと思われていることです。それだけだと、「カウンセリング」の領域で止まっています。その先までガイドしていくのが本当のコーチングです。

また、コーチングでは良いアドバイスをしなければいけないと誤解されています。コーチングでは、あまり積極的なアドバイスや提案はほとんど行いません。アドバイスや提案をするのは、「コンサルティング」の領域です。

コンサルティングは、こちら側が用意した「落としどころ」や「あるべき姿」に誘導していきます。コーチングでは、こちら側から「あるべき姿」を提示しませんし、押しつけません。あくまで、相手に考えさせ、相手の内側から「あるべき姿」を引き出すことに専念します。

なお、相手から出てきた「あるべき姿」が妥当かどうか、間違っているかどうかなどの議論は積極的に行いません。重要なので二回言いますが、こちら側の価値観を押しつけるようなことは、決してしません。道徳的に、法律的に問題がなければ、相手が納得して出した「あるべき姿」を採用していきます。

つまり、コーチングを行う人(コーチ)は、相手をコントロールしてはいけないのです。これは滅茶苦茶大切な視点なので絶対に覚えてください。もし、子どもや部下を、あなたの考えに従わせたいと思っているのであれば、コーチングは手段として適していません。

相手をコントロールしたい、相手を自分の考えに従わせたいと思う人もいるかもしれません。しかし、それをコーチングに期待すると、必ず不毛な結果として終わります。これは断言できます。あくまで、コーチングでは相手をコントロールしません。相手が方向性を100%決めます。

3. コーチングのメリット

「なるほど…でも、何でコーチングを使う必要があるの?」

何かしらのメリットがないと、積極的にコーチングをしようと思わないでしょう。では、コーチングのメリットとは何だと思いますか?

「例えば、相手のやる気が上がるとか?」

確かに、相手のモチベーションを向上させるのも、コーチングの重要な要素です。ただ、他にもモチベーションを上げる手段はあります。コーチング独自のメリットは何でしょうか。結論から述べると、「費用対効果(コスパ)の良さ」と「可能性の爆発」です。

3.1. 費用対効果(コスパ)の良さ

ティーチングは、相手に情報(知識やスキル)を手取り足取り教える必要があります。勿論、教える人の時間を消費することになります。企業であれば、人件費という形のコストが発生します。また、教える人は、その分野に精通している必要があります。最悪の場合、適した人材が見つからないケースも考えられます。

つまり、ティーチングは比較的高いコストがかかります。書籍やデジタル教材などを使えば、1対多で効率的に教えることができます。しかし、すべての人間が独学で理解できるとは限りません。また、モチベーションの維持などの課題も残ります。やはり、人間がリアルタイムでティーチングする需要は無くならないと思います。

一方で、コーチングは上手くいけば、低コストで実施でき、費用対効果がかなり高くなります。基本的には相手と対話するだけなので、コーチする側はティーチングほど時間を消費しません。慣れてくれば、一回あたり30~60分ほどで対応することも可能です。

さらに、直接教える訳ではないので、コーチが特別な分野の知識やスキルに精通していなくても何とかなります。分野に関する最低限の知識や、コーチングの基本的な知識・スキルを身につけておけば対応できます。学習するのも、物事を進めるのも相手側なので、コーチ側にかかるコストや負担は限定的です。

「なるほど…確かに相手が勝手に動いてくれたら楽かも。」

3.2. 可能性の爆発

コーチングを行うもう一つのメリットは「可能性の爆発」です。ティーチングの場合は、短期的に見た場合、教える人のレベル以上に相手の知識やスキルは向上しません。当然、100教えた場合は、その範囲だけの学習で留まれば、どんなに頑張っても100までしか到達できません。

つまり、ティーチング中心になると、その先の可能性が制限されがちになるのです。弟子が師の教えのみを教わっている限りは、師を超えることは決してできないのです。可能性を広げたいのであれば、師が知らないことや思いつかないことまで、自分で積極的に学んでいく必要があります。

コーチングの場合は、可能性の範囲を一切制限しません。この考えは極めて重要なことなので、二回言います。コーチが相手の可能性を決して制限してはいけないのです。相手がコーチの想定を大きく上回る結果を収め得ることこそが、コーチングの最大のメリットです。これに勝るものはありません。教えずして、1000以上の結果を出させることがコーチングの極意です。

弟子が師を超える存在になる可能性を摘み取ってはいけません。コーチングでは、出る杭を打ってはいけないのです。むしろ、突き抜けさせます。その点では、コーチは人間的な嫉妬や妬みなどの「負の感情」を持っていては務まりません。これがコーチに求められる真の条件です。

コーチングの最大の結果は、相手を「ずば抜けた位置」まで飛ばすことです。コーチがいる場所の一歩手間まで引き上げるようなレベルでは全く話になりません。子どもが自分を追い越すことを恐れてはいけません。部下が自分を追い抜くことに嫉妬してはいけません。

相手が自分の想定を大きく上回ることこそが、コーチングの最大の利益です。本当に相手のためになることだけにフォーカスします。考え方を刷新しましょう。

「マジですか…なんとか頑張ってみます。」

4. コーチングのデメリット

メリットを述べたので、逆にコーチングのデメリットについても言及しておきます。コーチングを行う条件としては、相手が事前に一定の知識やスキルを身につけておく必要があります。右も左も分からない子どもや、新入社員に対して、いきなりコーチングを行っても意味はありません。

なぜなら、まだ自分一人で物事を深く考え、答えを組み立てるための知識やスキルが不足しているからです。その状態でコーチングを行うと、かなりの確率で迷走してしまいます。最初は、一定の知識やスキルをティーチングで教えてあげる必要があります。その後に、コーチングに切り替えることが大切です。

また、コーチングでは結果が出るまでに長い期間(年単位)がかかります。相手は自分自身で考えながら、試行錯誤を繰り返すでしょう。人によって個人差もあります。当然、物事はスムーズには進みません。従って、コーチングでは、予め長い期間が必要なことを覚悟しておきましょう。

最後にコーチングの参考図書を紹介しておきます。これを読めばかなりの知識が身につきますので、挑戦してみてください。

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まとめ

今回は私が実践しているコーチングの基本的な考え方を紹介しました。具体的なコーチングのやり方については後編の記事で書きたいと思います。

押さえておくべきポイントとしては、

  • 相手に自発的に気づいてもらうようにガイドする
  • 目標達成や問題解決のための行動を起こさせる
  • 最終的には、相手が自分自身で行動できる状態まで支援する
  • 相手をコントロールしてはいけない
  • メリットは、「費用対効果(コスパ)の良さ」と「可能性の爆発」である
  • デメリットは、事前に一定の知識やスキルが必要なことと、長い期間がかかること